数年前にオーバーホールしたヤマハのC3タローネモデルを調律してきました。全弦張替とハンマー交換をしたピアノです。
アップライトピアノからグランドピアノに買い換えて、バッハに夢中になっている主婦の方です。インベンション、シンフォニア、フランス組曲、そして今はパルティータを練習しているのだとか。きっとゴールドベルク変奏曲、全部じゃなくてもアリアと好きな変奏も弾けるんじゃないかな、とおいとました後で想像してました。
その数日前にも、やはり大人のピアノ愛好家の方の調律に伺い、こちらのお客様はエリーゼのためにを弾いて、歴史に残る名曲を弾けることが嬉しいとおっしゃってました。
こうやってピアノを趣味として楽しんでいる方々は、どんなところでスイッチが入ってピアノにはまっていくのだろうと、長いこと考えていました。多くのピアノの生徒さんは中学校くらいで、学業や部活や受験でピアノを弾く時間わ失いやめて行きます。ある時は、ピアノを購入してくださったお客様が何年も経過してから電話をくださって「ピアノはもう使わないから出したいんですけど」と言われたことがあって、納品したときのとても嬉しそうな顔を覚えているだけにとてもつらい気持ちになったことがありました。
人それぞれのライフスタイルがある中で、「これがピアノの楽しみ方だ!」と押し付けるようなことはしてはいけないと思いつつも、でもせっかく高いお金を払って買ったものをそのまま寝かせてしまったり、簡単に手放したりするのはもったいないと思いあがいているのです。たかがピアノ調律師がそんなことを考え行動していくのはおごがましいとも思うのですが、末永くピアノ弾くことを幸せと思ってもらえるアイデアを模索して行きたいと思います。