今回の調律は私の調律師キャリアでも五本の指に入りそうなくらい大きくピッチが低下した案件でした。なにせチューナーで測定したらA=G♯+10セントくらいでしたから。

とはいえ百戦錬磨の私には相手にとって不足はない。腕が鳴るというものです。

まず大切なのは、弦が切れないか錆具合を見ること。調律する前から切れていたら調律中に切れる可能性はかなり高いです。切れてなくても錆がひどいとおっかないです。中を開けて様子を見たら、まあまあ悪くなかったです。

大丈夫そうなので調律を始めると、案外大丈夫そうなのでガンガンあげていきました。予想していたほどは手間はかからなかったです。大丈夫そうだと判断するのはチューニングハンマーを回す手の感触や音で感じていきます。手の感触や音で危険を感じることも多々あります。

非科学的でメルヘンチックなことですが、ピアノに「君はどうしたら良い音になってくれるんだい?」って語りかけるって大切だと思うんです。調律も修理もオーバーホールもそうやってピアノに向き合っていると思います。

Instagramにビフォーアフターを投稿しました。知られていないブランドのピアノでしたが、良い音してると思います。このピアノをみんなで楽しんでくれたらうれしいです。