当店で2009年にオーバーホールしたアメリカ製のグランドピアノStarrが戻ってきました。
PianoDisc社の自動演奏を取り付けてレストランで親しまれてきましたが、この度お役御免となり新しいオーナー様を探すことになります。
当時のエピソードをひとつ。あのときお客様が自動演奏付きのピアノをご所望されたため、在庫を持っていなかった私は自動演奏の後付けを探すためインターネットを徘徊していたところPianoDisc社を発見。早速お客様に報告したところ大変喜んでいただき即GOサインをいただきました。先方に問い合わせたところ「技術研修を受けた者のみに取り扱い許可」といわれ、お客様に「できます」といってしまった手前あとに引けなくなり無理やりサクラメント行きを決行。久しぶりのアメリカに胸を躍らせましたが、今思えば無謀なことをしたものです。
PianoDiscは楽しいです。まず見た目がすっきり。正面から見た外観では自動演奏が取り付けられていることはわかりません。アクションに部品を取り付けることが一切ないので、ピアノそのもののタッチが変わることもありません。そして、音楽ソフトはアメリカの一流アーティストのデータを使用しているので演奏内容が非常に面白い。演奏データはMIDI信号を音声信号に変換しているのでオーディオとの同期が可能、つまり自動演奏と歌、自動演奏とバンド、などのアンサンブルが楽しめます。そして、インターネットラジオを使用したPianoDisc Radioを接続することで無料で24時間ピアノ演奏が楽しめるのも画期的だと思いました。
アメリカの「Piano Book」という有名な書籍があって、初心者向けのピアノの選び方を解説する本なのですが、そこではPianoDiscよりもヤマハの自動演奏の方が再生クオリティは高い、と評価されていますが、多分アメリカ人の感覚としては「所詮機械なのでそこまでは求めない、本当の音楽は人が演奏するべき」という割りきりがあるのでは、と感じています。ヤマハとの最大の違いはパーツごとにアップグレードしていけるので、システム自体が古くなってもピアノを変えずに最新の自動演奏に変えていけることだと思います。
今度新たにピアノディスクジャパンが設立されたので、日本独自のコンテンツが生まれていくことに期待です。
以上はPianoDiscの評価ですが、私個人的にはやっぱり調律師でありマシンの専門家ではないので、今後自動演奏の問い合わせがあったらピアノディスクジャパンにお任せしようと思います。そして、このStarrに取り付けたシステムも取り外すつもりです。
Starrは南国ピアノ芸術にとってとても思い出深いピアノであり、個人的見解を抜きにしても非常によいピアノであると確信しています。1924年製のこのピアノは、アメリカの経済最盛期に生まれたピアノで部品などもとても良い材質にこだわったのでしょう、Steinway & SonsやMason & Hamlinなどのようなハイエンドブランドではないにせよ、非常に高いポテンシャルを持っていると思います。
現在外装修理が終わった段階で、これから調律・整調を施します。その後はご試弾いただけますので、興味のある方はどうぞお問い合わせください。
↑↓ヒンジなどの真鍮パーツの光り方もゴージャスです。もしかしたら真鍮の純度なんかもあるのかも。マイナスネジもひとつもなくなっていません。
現存しないブランドだし、出戻りさんだし、グランドピアノとしてはお値打ち価格になる予定です。お楽しみに。