新品から1年経過したピアノの調律に伺いました。こんなに若いピアノを調律する機会は滅多にないのでとても新鮮な経験です。
当店では1古いピアノを好んでオーバーホールをしていますが、新品には新品の良さがあるのもよくわかります。オーバーホールで弦やハンマーを交換しても、本体の木そのものは当時のままですから。海外やもしかしたら国内でも響板というギターでいうところのボディに相当する部品を交換する技術者さんはいますが、さすがにそこまでやるかは必要性を考えさせられます。
というわけで新しいピアノの音を堪能してきたわけですが、とても素晴らしかったです。
ところで全く違う日に違うピアノを調律した日に不思議な体験をしたのでここに記します。
割振調律という、7オクターブ半ある音域の基礎となる1オクターブを整える作業でA♯とD♯の2音を同時に鳴らしながら加減していたときに、この2つの音のハーモニーには「元気がないな」と思っったのです。技術的には2つの音の間隔を広げて唸りを増やしたわけなのですが、「元気がない」という表現をしたのは我ながら意外で面白かったです。音を擬人化しているようで、音を合わせるというより騒いだりごちゃごちゃしている生き物をたしなめているような感覚でした。なんか詩人みたいですね。
もう調律を始めて25年くらい経ってるし、何か違うステージに移っているのかもしれません。そんなことを考えながら、今日もピアノのお仕事を楽しんでいます。